ドメーヌ訪問 ジャック=フレデリック・ミュニエ編

今回はオプショナルツアーで訪問した、ドメーヌ・ジャック=フレデリック・ミュニエをご紹介します。

ヴォグエ、ルーミエに並んでシャンボールの第一人者であるこのドメーヌは、通常、
プロフェッショナルの方のみに訪問が限られていて、専属インポーターの許可が必要となります。
今回のお客様はワイン関係のプロではありませんでしたが、大変なワイン愛好家でした。また食通でいらっしゃるため飲食店経営者にお知り合いが多く、そういった関係でドメーヌ訪問が可能になりました。

ドメーヌの歴史 :

現当主から5代遡り、ディジョンでリキュール会社を経営していたフレデリック・ミュニエ氏が1863年にワイン造りを開始。当時はリキュールと平行して、シャンボールとニュイ=サン=ジョルジュの20haにも及ぶ畑からワインを醸造していました。1878年からアペラシオン制度が確立するまでの間、ドメーヌのワインは、ボルドーのラベル記載の習慣にならって「シャトー・ド・シャンボール=ミュジニ」の名で販売されていました。

二度に渡る世界大戦、世界恐慌を経て、経営が苦しい時期はドメーヌ(自社畑)をフェルマージュ(賃貸)にして凌ぎ、それでも、先代ジャック=フレデリック氏は1950年、リキュールをやめてワイン一筋に。次いで現当主フレデリック氏は1985年に4haのシャンボール(村名&プルミエクリュ)の畑を、2004年には念願のニュイ=サン=ジョルジュ・プルミエクリュ クロ・ド・ラ・マレシャルを取り戻しました。(フェルマージュの契約期間が終了した為。)この畑は10haにも及ぶブルゴーニュで最大のモノポール畑なのです。ドメーヌの規模はこの時一気に4haから10haへと拡大しました。

※モノポール:畑全部を一人の生産者が所有すること。希少性が上がり、ワインの価値も上がります。




私たちを接待してくださった、オードレーさん。
私が通ったボーヌのワイン学校では同級生でした。


まずは醸造所を訪問。
2004年、クロ・ド・ラ・マレシャルの返還に合わせ、新しい醸造所を造って施設を拡大。現在は、古い醸造所とそれに隣接する新しい醸造所をフルに活用しています。

醸造所から階段を下ると地下にはセラーがあります。
セラーも同様、もともとあった古いセラーと新しいセラーが隣接。
樽詰めされた2010年のワインが、今静かに澱の上で寝ています。

私たちはこの日、瓶詰め直前の2009年のワインを試飲させていただきました。村名のシャンボールから始まり、フュエ、ボンヌ=マール、クロ・ド・ラ・マレシャル、レザムルーズ、そしてシャンボールの最高峰のグランクリュ、憧れのミュジニ。

因みにこのドメーヌの村名ワインは、コンブ・ドルヴォー(ミュジニとエシェゾーに囲まれた最高の位置にある村名クラスの畑)とプルミエクリュ・レ・プラント(シャンボール、レ・シャルムの隣り)が半分ずつ混ざっているブレンドです。つまりプルミエクリュが半分含まれている贅沢な村名ワインなのです。若い頃から華やかで、フローラル系の香りが心地よく、軽やかで繊細な個性を持っています。

テイスティングの順番もよく考えられていて、同系統のフュエとボンヌ=マール(シャンボールの北側に当たる隣り合わせの畑)と、それとは別系統のレザムルーズとミュジニ(シャンボール村の南側に当たる隣り合わせの畑)が、それぞれグルーピングされていました。
こうすると2つの系統がはっきりと違うのがよく分かります。

フュエとボンヌ=マールは黒系の果実の香りにスパイシーさが重なり、タンニンや骨格がしっかりしていて、若いうちは少し厳めしい感じさえする。潜在能力を強く感じます。

レザムルーズとミュジニは繊細かつ精妙、赤系の果実やフローラルな香りと絹のような滑らかな触感のハーモニーが美しく、余韻が細く長く続き心地がいい…。まさにシャンボールの粋美。

2009年の特徴として、全体的にアルコール度が0.5度くらいずつ平年より高くなっているようです。夏に8日間くらい30度以上になり、その間にブドウの糖分がぐっと増したのだそうです。収穫前の天候は特に成熟中のブドウに影響を与えます。2009年は、一年中天候に恵まれてブドウ樹が病気に悩まされることのなかった、偉大なヴィンテージです。

最後に2008年のクロ・ド・ラ・マレシャルを開けていただきました。1年でこんなに違うのかと思うほど、2009年と比べて香りが開いています。
2008年は、2009年とは正反対のタイプのヴィンテージ。
まさにブルゴーニュらしい、畑の個性がはっきりと表れたクラシックな年です。ヴィニュロン(造り手)が愛すべきワインの仕上がりになっています。
今日の段階では酸がフレッシュでまだまだ若く、飲み頃に達するにはまだ何年かかかるでしょう。でも、このように垂直で試飲すると、たとえ1年でもワインはこんなに変わるのだということがよく分かります。



最後にお会いしたフレデリック・ミュニエさんです。
彼のワインは高貴で威厳があり、その繊細で長い余韻はクラシック音楽を想像させます。彼にもまた、高尚で物静かで、正直なイメージがあります。

長崎の島原ご出身のひいおばあちゃんは日本人で、中国に渡った時にフランス人の軍人さんと出会い、ご結婚されたんだそう。
ハーフのおばあちゃんには、すき焼きを作ってもらったこともあるとか。
そのせいでしょうか。この方に会うと、いつもちょっと緊張するのですが、それでいて何となく親近感を感じます。

震災に遭われた方々のため、2002年のミュジニを6本、2007年のクロ・ド・ラ・マレシャルを24本、ミュジニのマグナムを3本、各インポーターさんを通じて寄付してくださったとのことです。

お天気もよく、すがすがしい朝の訪問でした。





◆ ワイン愛好家の興味にそったブログを書いていきたいと思っています。面白いと思った記事には是非、をお願いします。
今後の参考にして、人気のあるテーマのみに絞っていきたいと思います。


☆ ドメーヌ手配&訪問にご興味のある方からのコンタクトお待ちしています。

ブルゴーニュ・レザンドール 

http://www.geocities.jp/yuko_raisindor/
Email : yuko.raisindor@yahoo.fr