ドメーヌ訪問記 ルイ・キャリヨン、グロ・フレール・エ・スール、カミュ・ペール・エ・フィス編 前編

ブルゴーニュにいらしたら、やはり好きなドメーヌを訪問するのが一番の楽しみ方だと思います。そして、普段愛飲されているワインの造り手と意思を交わし合い、彼らのワイン造りの情熱に触れてみたり、愛好家としての自分の情熱を伝えたりする。
もともと異文化交流に興味があった私は、日本からはるばるいらしたお客様と造り手との会話の架け橋となれたと実感するとき、この仕事をしていて最も喜びを覚えます。

今回のお客様は土屋様ご夫妻。(お名前の掲載はご本人の許可をとっています。)
希望されたドメーヌは、

ドメーヌ・ルイ・キャリヨン
ドメーヌ・グロ・フレール・エ・スール
ドメーヌ・カミュ・ペール・エ・フィス

です。


ドメーヌ・ルイ・キャリヨン

爽やかな空気に満たされ、朝の優しい日差しを畑一杯に浴びるグランクリュ・モンラッシェを観光した後、静かなピュリニーの住宅街へと車を進めます。

教会のふもとにあるドメーヌ・ルイ・キャリヨンは、代々ピュリニーでワイン業を営む生粋のピュリニーの生産者。外壁には「1632年」とい書いたドメーヌの看板が、うっそうと絡まる蔦に見え隠れしています。

「現存の最も古い台帳によれば、1520年までキャリヨン家の軌跡を辿ることができます。」
とジャック・キャリヨン氏。
「その前にも先祖はいたのだろうけれど、さすがに調べる手段が途絶えてしまう。当時はワインだけではなく、他の農作物や家畜を育て、ワイン造りを兼業していました。これはブルゴーニュの多くの造り手が辿っている経緯です。」

ドメーヌの名主、ルイ・キャリヨン氏は、7〜8年前に第一線を退いて二人の息子にドメーヌを任せました。それでもやはり根っからのヴィニュロン、今でも何かと手を貸してくれて、存在感があるんだそうです。

彼の息子、ジャックさん(兄)とフランソワさん(弟)は父と同じ意志を分かち合い、2009年まで一緒にブドウを育て、ワインを醸造し、瓶詰めして、「ドメーヌ・ルイ・キャリヨン」のラベルの元、ワインを販売していました。

しかし夫々が家庭を持っていることもあり、将来のことを考えて、2010年からは二つのドメーヌに別れることになりました。つまり2010年のヴィンテージから、「ドメーヌ・ジャック・キャリヨン」と「ドメーヌ・フランソワ・キャリヨン」という二つの新しいラベルの元、販売されるそうです。


今日は長男にあたる、ジャックさんを尋ねました。

真面目でちょっぴり几帳面な感じのするジャックさんのワインは、「これぞピュリニー」と言えるほど、真っ直ぐな酸があり、畑のそれぞれの個性がはっきりと表れています。

2009年のピュリニー村名、3つのプルミエクリュの比較試飲、次いでまだマロラクティック発酵中のものも含まれる2010年のワインを樽出しで、貴重なビアンヴニュ・バタール=モンラッシェまで試飲させていただきました。

村名のピュリニーは、ワインに樽香がつきすぎないよう600リットル入りの大きな樽の中で熟成され、ワインと樽とのバランスが最適です。
まさにピュリニー全体を象徴するような郷土の風味を、口の中に含んだワインを通じて感じるとき、ピュリニーで生まれ育った彼のようなヴィニュロンたちは、自分の故郷をはっきりとイメージするのだろうと思います。

3つのプルミエクリュの比較試飲は、テロワールの違いが明確に出ていて面白い。

シャン・カネはフローラルで若いうちから開いていて飲みやすく、

ペリエールはオイリー感のあるリッチさをミネラルがキリっと引き締め、

ルフェールはミネラルが更に高くて、ペリエールほどのリッチさやオイリー感はない。
最後に選ばれたプルミエクリュだけあって、ルフェールは初めから終わりまで細く長く余韻が続き、ミネラルに強調された酸を調和されたコクが取り巻いている…

地図上で確かめれば3つともピュリニーの北側に当たるムルソー寄りの畑。どうしてこんなにも違うのだろう。

世界の七不思議のような疑問を抱いて唖然としている私たちに、ジャックさんが夫々のテロワールの違いを説明してくれました。
ミネラル感が土壌のどの成分からくるのか、華やかさはどこからくるのか、オイリー感はどこからくるのか……。

その説明はやはり、毎日土に触れ、ブドウ樹の手入れをし、雨の日も風の日も状態を観察している彼だからこそ出来る、思わず納得させられる分かりやすいものでした。

今日のお客様は、「ミネラル感が何か?」という日ごろの疑問の答えを、造り手と一緒に理解することができて嬉しそう。その満足そうなお顔を見て、ジャックさんも思わず微笑んでいました。


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午後一番は、グロ・フレール・エ・スール。

出荷直前のリシュブールを発見!いいなぁ、美味しそうだなぁ。

このドメーヌは200年もつづく歴史あるグロ家の家系。

テイスティングはコート・ド・ニュイから始まり、ヴォーヌ=ロマネ、続いてクロ・ヴージョ“ミュジニ”、エシェゾー、グラン・エシェゾー、リシュブール…まさに夢のような高貴なアペラシオンのテイスティング。2009年でまだ生まれ立てのワイン。赤ちゃんのようなものです。まだ若いので10年後を想像しながら飲む必要があります。

実はこのドメーヌ、白のオート・ド・コート・ニュイも美味しいんです。赤があまりに有名なのでご存知ない方もいらっしゃるかと思いますが、地方名だからといってすぐに飲まず、3〜4年寝かせてみてください。驚くほど美味しくなって香りとまろやかに広がるハーモニーが楽しめます。私の初体験は2002年のヴィンテージでしたが、これが美味しくてビックリしました。(飲んだのは2006年。)グロ家のドメーヌの中ではもっとも力強い造りなので、やはり寝かせる必要があるのだろうと思います。

また、この辺では珍しくロゼも作っています。ブルゴーニュではマルサネ以外は村名でロゼは売れませんので、当然地方名クラスとなりお値段がお手頃。でも土壌も造りもしっかりしているせいか、南のロゼよりずっと上品です。(このロゼの楽しみ方は4月23日のブログご参照ください。)

畑で、オフィスで、醸造所で、セラーで、いつも忙しそうに働いているベルナールさん。それでもわざわざ遠方からいらしてくださった訪問客の方のために、作業を一瞬止めて記念撮影に応じてくださいました。




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今回のブログもまた長文になってしまいました(苦笑)
読者の方が疲れず楽しく読めるように、これでも出来るだけ短くまとめようと努力しているのですが…、、

それでもワイン好きの私が、敬意を払う造り手について書くとき、造り手のイメージを伝えたいと思うとなかなか省略できません。

それにだからこそ、ドメーヌはこんなに丁寧に接してくれるんだと思うんです。丹念に造っているワインのイメージは、丹念に伝えなければならない。そういう思いがどの造り手にもあるはず。

というわけで、3軒目については、また次回のブログでお伝えします。

完読お疲れ様でした。また次回もぜひブログを覗いてみてください。


重要!


文中のドメーヌは、日本で実際に愛飲されている方のみ、お客様として訪問を受け付けています。

コンタクトをとるには、ドメーヌ側にこれだけの時間と労力、ワインの消費をお願いするに相応しい具体的な訪問理由が必要です。(自己紹介、普段ここのワインをどれくらい飲んでいるのか等。。)

ブログを読んでという理由での訪問は受け入れられませんのでご了承ください。



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ブルゴーニュ・レザンドール 
http://www.geocities.jp/yuko_raisindor/
Email : yuko.raisindor@yahoo.fr